1
漁師。
うちの親父は漁しているとき
しょっちゅうカモメから「フン」
をかけられていた。
カモメはランダムにフンをするわけでは
ないと思う。
絶対、狙ってフンを引っ掛けている。
しかも、風とか人間の動きとか
計算してフンを引っ掛けている。
カモメはフンを引っ掛ける天才である。
2
漁師。
帰港するとカモメが
箱詰めされていない魚を狙いに来る。
ある日、ハモを盗まれ食べられた。
しかし、ハモは長いのでカモメの口から
尻尾がはみ出すのである。
違うカモメがそのはみ出したハモの尻尾を
食う。
その口から、またハミ出す。
1時間くらい食ったり食われたり
繰り返していた。
3
漁師がビニール手袋を履く理由。
僕はママさんビニール手袋の上に
軍手を履いて漁の作業をする。
魚を箱に
詰めるのが僕の主な係だったが
素手に軍手だと
手が魚汁で腐るのである。
手が腫れて指紋もなくなる。
それほど魚汁は強力に肌に刺激的である。
だから、ビニール手袋は欠かせなかった。
4
漁師。
漁に出ると時々
「フシューっ!」て
10メートルくらい
海の上から水が吹き上がる事がある。
「クジラ」だ!
かなりデカイ。20メートル以上あるだろう。
水面から身を乗り出したり
尻尾が「ザパァーっ」て
海面を叩く光景は
テレビで見るより
遥かに迫力がある。
とにかくデカイのだ!
5
漁師。
漁に出て仕掛けた、はえ縄を
あげているときに「アザラシ」
が来る。
針からはずれた魚を食べに来るのだ。
結構大きい。
はずれた魚を
海の上にポイポイ投げたり
くわえに行ったりして
遊んでいる。
頭がいいので
船には近づいてこないが
魚で遊んでいる光景が結構かわいい。
6
#漁師
今振り返れば思う。
行政書士事務所と漁師の兼業を
7年間もよくやれたもんだな〜と。
若かったんだな〜と。
妻も行政書士事務所の手伝いと
漁業の手伝いを
掛け持ちで7年もやってくれた。
僕なんかにはもったいない女である。
7
#漁師
仕事が過酷で疲れが
次の日も次の日もず〜っと残る。
だから、休みの日は
買い物以外はひたすら寝て体力を
回復させていた。
20代でもきつかったので
30代になってからは
「このままでは過労で倒れるのではないか」
と思うこともあった。
でも、倒れていない。
人間とは意外に丈夫である。
8
#漁師
はえ縄船は船の至る所に
マキリ(包丁のナイフみたいなもの)
を置いている。
体が縄や他の漁師の仕掛けに巻かれた時に
すぐに切れるようにするためだ。
縄に巻かれれば海の底に引っ張られてヤバイ!
体力も使うが神経も使うぞ!漁師!
9
#漁師
海がしけた時、漁に出て
船の先端が波をすくってしまった。
気が付いたら3メートルくらい
船上で波に流されていた。
体がどの方向を向いているのか
自分が今、どこにいるのか
一瞬わからなくなった。
海に落ちてたら助かる可能性、ほぼ0%
生き延びたぜ!
10
#漁師
何年か前、
1回、手足がしびれて
「脳梗塞か?」
と思われる体験をした。
その時思ったのが
「もう漁師しなくて済む」
だった。
脳の検査の結果
「異常無し!」
漁師続行っ!